原語は結合、交際、寄り合い、仲間、社交などの意味をもち、共同の集会の場における諸個人相互間の交流(コミュニケーション)という集合行為を示すことばである。
そして、この集合行為が一群の人々の間で繰り返され、安定し固定していくと、社交界とか上流社会そのほか地域や職域における人々の間柄、社会関係または集団を形成することになる。
したがって、社会というヨーロッパ起源のことばは、一群の人々がある共通の目的のために互いに自由な主体として対等の立場で相会し、共同の行為に参加する(団結、結社)という事態を意味していた。
これとほぼ似通った「社会」の用例は、中国の古い文献にも出ており、「郷民為社会 為立科条」という表現が『近思録』(1176)にみられる。
または原始的な文化段階にある社会をいう。
「原始」という語は古くから中国にあったが、『易経』(繋辞(けいじ)上)に「原始反終」とみえるように、「始めを原(たず)ねる」、「根原を推し究める」という意味をもっていた。
武内義雄(たけうちよしお)の名著『老子原始』(1928)は、「原始」をその意味に用いた例である。
近代に至って中国や日本では英語のprimitiveの訳語として「原始」(形容詞)、「原始的」の語が採用され、「原始」に「元始」という意味が加わった。
英語のprimitiveやフランス語のprimitifなどは、ラテン語のprimitivus(「最初の」「初期の」)に由来している。
ローマ人は、「野蛮な」を意味することばとしてferusまたはギリシア語からきたbarbarusを用いたけれども、primitivusという語をそのような意味には使わなかった。
ギリシア、ローマ人は、彼らの祖先たちも、最初は周辺の野蛮人と同じように、粗野な状態にあったと考えていた。